産後の不調に良い漢方薬紹介・解説
出産は、全治3ヶ月の怪我をしたのと同等のダメージと言われています。出産後は、ほとんどの人が何らかの不調を感じるでしょう。産後の不調に対応した漢方薬はたくさんあります。ここでは、産後の不調に使われる漢方薬を、体質や症状に合わせて紹介します。
この記事の目次
食欲がある場合
食欲がある場合、胃腸が弱っていないので、血を補う生薬(胃腸に重い場合がある)を多く含んだ漢方薬が使えます。血を補う作用が強い漢方薬で、産後の回復に役立つ漢方薬を紹介します。
婦人宝(ふじんほう)
貧血や体力の不足に使われる薬です。甘いシロップ剤として売られています。血を補う生薬と体力を補う生薬複数に、血の巡りをよくする生薬と止血する生薬を組み合わせています。体を暖める作用もあり、冷え性の薬としても使います。婦宝当帰膠(ふほうとうきこう)という名前で売られている場合もあり、こちらは黒糖入りでさらに体を温めます。
十全大補湯(じゅうぜんたいほとう)
気力と体力を補い、血を補って貧血を治す漢方薬です。体力を補う生薬複数と、血を補う生薬複数が組み合わせられています。サポートとして、体の巡りを良くする生薬が含まれているので、体質が合えば冷え性にも効果が出ます。
人参養栄湯(にんじんようえいとう)
十全大補湯と似た生薬構成で、やはり気力・体力・血を補います。十全大補湯より、不眠・不安・咳がある人に向いています。
芎帰調血飲(きゅうきちょうけついん)
「産後一切の諸病」に有効だと、漢方の古い教科書(万病回春)に書かれている薬です。血を補い、血の巡りをよくしますので、貧血にも悪露にも効果があります。また、気の巡りをよくしてイライラやうつ、ヒステリーを和らげます。胃腸の調子を整え、栄養の吸収を良くすることでも貧血の改善をサポートします。下腹やみぞおちを触ってみて冷えている場合はこの薬は向いていません。
芎帰調血飲第一加減(きゅうきちょうけついんだいいちかげん)
芎帰調血飲をベースに、血の巡りをよくする生薬と気の巡りをよくする生薬の種類を増やし、作用を強化した薬です。産後疲れやすく、イライラが強い人に向いています。
食欲がない場合
当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)
穏やかに体を温めつつ血の巡りをよくし、貧血を改善します。むくみがちで胃腸が強くない人に向いています。妊娠中、安胎に使われる漢方薬でもあります。
帰脾湯(きひとう)
食欲がなく、よく眠れず、常にぼーっとしている人向けの漢方薬です。気と血を補うので、体力不足と貧血によく使われます。胃腸が強くない人向けの漢方薬ですが、胃腸が弱い場合はさらに胃腸に優しい漢方薬が向いている場合があります。イライラやのぼせがある場合には加味帰脾湯(かみきひとう)が向いている場合があります。
六君子湯(りっくんしとう)
胃腸を元気にして、栄養の吸収をよくして体力をつける漢方薬です。貧血だけれど胃腸が弱くて鉄剤が重い、という人に出すとよく効きます。胃を動かす生薬も含まれているので、胃もたれしがちでも安心です。
四君子湯(しくんしとう)
六君子湯から胃を動かす生薬を引いた薬です。胃を無理に動かすのも負担なくらい、胃腸が弱い人に向いています。胃腸を元気にして栄養の吸収をよくするので、胃腸が弱い人の体力不足や貧血に使われます。
悪露をすっと出したい場合
桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)
血の巡りをよくする漢方薬です。特に下半身の血の巡りを良くするので、悪露だけでなく、血行不良による生理痛や子宮筋腫にも使われます。妊娠中の服用は、流産や早産を引き起こすので禁忌です。肩こりや肌のシミ・くすみにも効果があります。
折衝飲(せっしょういん)
桂枝茯苓丸と当帰芍薬散を合わせたような薬です。ただ合わせただけでなく、血の巡りをよくする生薬がさらに足されているので、血をめぐらせる作用がより強くなっています。足された生薬には、体を温めて痛みを和らげる作用もあるので、冷えて血行が悪くなっている場合に特におすすめです。
産後におすすめの食材
出産では大量に出血します。また、産後は授乳で血液中の栄養分を消耗します。漢方では血液と血液が含む栄養・ホルモン・酸素などをひっくるめて「血」(けつ)と呼びます。産後は血を補う食材を取るのがおすすめです。また、産後は体のあちこちで血の流れが滞るとされているので、血の巡りをよくする食材も合わせて紹介します。
血を補う食材で、手に入りやすいものは以下です。
- 黒豆
- 枝豆
- 黒キクラゲ
- しめじ
- にんじん
- ほうれん草
- よもぎ
- ぶどう
- 黒ごま
- あさり
- あなご
- いか
- いわし
- うなぎ
- 牡蠣
- かつお
- 鮭
- さば
- ぶり
- まぐろ
- ひじき
- 牛肉
- 牛レバー
- 鶏レバー
- 豚レバー
- 卵
太字は体を温める食材です。産後は体が冷えやすいので、参考にしてください。
また、血の巡りをよくする食材で、手に入りやすいものは以下です。
- 黒米
- こんにゃく
- 黒豆
- 納豆
- らっきょう
- ザーサイ
- しし唐辛子
- 玉ねぎ
- ちんげんさい
- なす
- にら
- みょうが
- グレープフルーツ
- ブルーベリー
- 桃
- 栗
- いわし
- うなぎ
- 鮭
- さば
- さんま
太字は体を温める食材です。産後は体が冷えやすく、また冷えると血の巡りが悪くなりやすいので参考にしてください。
まとめ
産後の不調に使われる漢方薬はたくさんあります。漢方薬は産後の回復に役立ちますが、胃腸が弱いかどうか、食欲があるかどうかで、使える漢方薬の種類がかなり変わります。気をつけてください。普段の食事でも、出産と授乳で失った血を補い、血を巡らせる食材を意識して取りましょう。何でもお気軽にご相談下さいませ。
加美漢方薬局
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