落ち込み・不安の漢方薬
落ち込みや不安にも漢方薬はよく使われます。抗うつ剤や抗不安薬もあり、これらは切れ味の鋭い効果が出ますが、漢方薬は、体力をつけて体を丈夫にすることで精神を安定させたり、体の巡りをよくして精神面以外の不調もスッキリさせます。また、抗うつ剤や抗不安薬だと副作用が激しく使いにくい場合も漢方薬が役に立ちます。
漢方薬は体質と症状に合わせて使い分けないと効果がありません。合わない漢方薬を使うと逆に悪影響が出る場合もあります。体質や症状に合わせて漢方薬を紹介します。
元気が出なくて疲れやすい
体力がなく、すぐ疲れる人の落ち込みに使われる漢方薬を紹介します。
四君子湯(しくんしとう、または六君子湯りっくんしとう)
胃腸が弱く、食欲がなくて疲れやすい人向けの漢方薬です。胃腸に力をつけて栄養の吸収をよくし、体力をつけます。胃の動きが悪く胃がもたれがちな場合は、胃を動かす生薬を四君子湯に足した六君子湯を使う場合があります。
帰脾湯(きひとう、または加味帰脾湯かみきひとう)
食欲がなく疲れやすい人の、くよくよする、やる気が出ない、すぐ横になりたい、不眠気味などに使います。胃腸に力をつけ栄養の吸収をよくして体力をつける漢方薬です。精神を安定させる生薬も含まれています。イライラ・のぼせがある場合は体の熱を冷ます生薬を加えた加味帰脾湯を使う場合があります。胃腸が弱い人の貧血にもおすすめです。
補中益気湯(ほちゅうえっきとう)
働きすぎて疲れ切った人に体力を補う漢方薬です。内臓に元気をつけて持ち上げるので、胃下垂や子宮脱などの内臓下垂にも使われます。元気がない人によく出される漢方薬です。
十全大補湯(じゅうぜんだいほとう)
食欲はあるものの疲れ切っている人に元気を補給する漢方薬です。体力を補う生薬が豊富に含まれていますが、胃腸が弱い人は四君子湯や帰脾湯のほうが向きます。
人参養栄湯(にんじんようえいとう)
食欲はあるものの疲れ切っていて、不眠や精神の不安定さを感じている人向けの漢方薬です。十全大補湯と似た漢方薬ですが、精神を安定させる生薬が含まれています。胃腸が弱い人は四君子湯や帰脾湯のほうが向きます。
防已黄耆湯(ぼういおうぎとう)
ダイエットによく使われる漢方薬ですが、本来は体力をつけつつ体の余計な水を抜く薬です。体の水分代謝が悪く余計な水が溜まっていると、だるさを感じることが多く、また体力がないと体の水分代謝が悪くなりがちです。体力がなく水太りの人のだるさに使う場合があります。
真武湯(しんぶとう)
本来は体力虚弱で体の中心が冷え切っている人の風邪薬です。しかし、漢方では、体力虚弱で体の中心が冷えている場合は体の中心を温めることが最重要事項であり、体の中心が温まると他の不調が改善したり、他の漢方薬で治療する準備段階が整ったりするため、疲れ切って落ち込んでいる人に真武湯を使う場合があります。
落ち込みだけでなくイライラや喉のつまり感がある
漢方は、体の巡りも重要視します。体力が十分にあっても、体の巡りが良くなければ落ち込み・イライラ・お腹のハリ・喉のつまり感が出ると考えます。体の巡りが良くない場合に使われる漢方薬を紹介します。
半夏厚朴湯(はんげこうぼくとう)
ストレスや食べ過ぎなどで胃腸の動きが悪く、喉に梅の種くらいの何かが詰まった感じがある場合によく使われます。紫蘇や厚朴などの香りのよい生薬を含む漢方薬ですが、漢方では香りのよいものは気の巡りをよくすると考えます。
葛根湯合半夏厚朴湯(かっこんとうごうはんげこうぼくとう)
半夏厚朴湯が向く人で、神経の緊張により首や肩のこりがひどい人に使います。胃腸の動きがよくなり、首と肩がほぐれると気分がよくなります。ただ、葛根湯は体力が中程度以上にあり、みぞおちや下腹を触ってみて冷えていない人向けの薬なので、体力がなく体の中心が冷えている場合は向きません。
抑肝散(よくかんさん)
イライラや怒り、そのせいで眠れないなどに使われます。中程度以上に体力がある人向けです。子供の夜泣きや認知症で怒りっぽいなどにも使われます。
香蘇散(こうそさん)
体を温め、かつ体の巡りをよくする、体力がない人向けの風邪薬ですが、体力がない人の体の巡りの悪さ由来の落ち込みにもおすすめの漢方薬です。紫蘇、陳皮(みかんの皮を干したもの)、香附子など、香りのよい生薬が中心の漢方薬です。胃の動きの悪さを感じていたり、胸が塞ぐような思いがしていたりする人に向きます。
柴胡加竜骨牡蛎湯(さいこかりゅうこつぼれいとう)
体力が中程度以上にある人の、動悸や不眠に使います。不安に使う場合もあります。精神を安定させる生薬や神経の高ぶりを取る生薬が含まれています。
柴胡桂枝乾姜湯(さいこけいしかんきょうとう)
柴胡加竜骨牡蛎湯が向くけれど体力がない人向けの漢方薬です。不眠や不安に使います。上半身の熱を冷ましつつ下半身を温める生薬の組み合わせなので、風邪をこじらせて熱っぽいけれど下半身が冷えている場合に使う薬です。
大柴胡湯(だいさいことう)
体力がある人の高血圧に使う薬であり、体の巡りが悪く便秘がある人のイライラやのぼせ、肩や背中のこりにいい漢方薬です。便秘がない場合は下剤となる生薬を除いた大柴胡湯去大黄を使う場合もあります。
四逆散(しぎゃくさん)
体力が中程度以上にある人の体の巡りをよくする漢方薬です。ストレスが溜まってイライラや落ち込み、ため息、お腹のハリがある場合に向いています。体の中心が熱いけれどストレスや神経の緊張で手足が冷えている場合に使う薬です。
柴胡疎肝湯(さいこそかんとう)
四逆散に、体の巡りをよくする生薬と、各生薬の副作用を緩和する生薬を足した薬です。イライラ、憂うつ、胸脇部の張り、ため息などに使います。女性では、生理時に乳房が張って痛む、生理痛、生理不順にも使います。ストレスで体の巡りが悪くなると頭痛や肋間神経痛、肩の痛み、脇腹の痛みがひどくなる場合があるのですが、柴胡疎肝湯は四逆散より鎮痛作用に優れます。
加味逍遙散(かみしょうようさん)
女性の生理前症候群(PMS)によく使われる漢方薬ですが、体の巡り全般をよくするのに使われます。イライラやのぼせがあり、気分がコロコロ変わったり怒りやすかったりする人に向いています。
疲れやすくイライラもある
体力がなく、それでいて体の巡りが悪い人もいます。
抑肝散加陳皮半夏(よくかんさんかちんぴはんげ)
イライラや怒りに使われる抑肝散に、胃の動きをよくする生薬を足した漢方薬です。胃腸が弱い人に向いています。イライラや怒りで眠れない場合にも使います。
茯苓飲合半夏厚朴湯(ぶくりょういんごうはんげこうぼくとう)
半夏厚朴湯に、胃の水分代謝が悪く水が溜まって吐き気がする場合に使われる茯苓飲を足したものです。つわりに使う漢方薬として知られますが、体質が合う人の不快な不調を緩和して、精神に好影響を与えるのにも使います。
不安
漢方では、不安に使う漢方薬を、元気が足りず精神にも影響している場合と、体の巡りが悪く精神に影響している場合で使い分けます。
酸棗仁湯(さんそうにんとう)
不眠に使う漢方薬として有名ですが、不安にも使われます。精神を安定させる生薬が大量に含まれていて、全体的な生薬構成が体力虚弱な人の体の熱を冷まし安定させる用に作られているためです。
甘麦大棗湯(かんばくたいそうとう)
ヒステリーや赤ちゃんの夜泣きによく使われる漢方薬ですが、体質が合う人の不安にもよいです。甘いものを欲しがる人が多いですが、甘麦大棗湯を飲んでいる間はお菓子を控えると効きがよくなります。
半夏厚朴湯(はんげこうぼくとう)
半夏厚朴湯は不安にも使われます。喉のつまり感があり、よほど胃腸虚弱でなければ、半夏厚朴湯や半夏厚朴湯を含む派生漢方薬を使ってもいいでしょう。
桂枝加竜骨牡蛎湯(けいしかりゅうこつぼれいとう)
体力がなく不眠がちで、眠れても夢をたくさん見る場合によく使われます。精神を安定させる生薬と体の巡りをよくする生薬、体力を補う生薬がバランスよく含まれています。
柴胡加竜骨牡蛎湯(さいこかりゅうこつぼれいとう)
柴胡加竜骨牡蛎湯は不安にも使われます。ある程度体力がある人で、不眠や動悸が伴う場合に向きます。
帰脾湯(きひとう、または加味帰脾湯かみきひとう)
体力をつけて精神を滋養し、安定させるので、食欲がなく体力虚弱な人の不安に使われます。のぼせやイライラがある場合は加味帰脾湯のほうが向きます。
まとめ
落ち込みや不安によく使われる漢方薬を紹介しました。体質や症状に合わせて、ここに紹介した以外の漢方薬が使われる場合もあります。漢方の視点から体質と症状を見極めて、ピッタリの漢方薬お合わせ致します。お気軽にご相談下さいませ。
加美漢方薬局
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