腎炎・慢性腎炎
この記事の目次
- 慢性腎臓病とは
- 早期発見には検査を
- 腎臓の働き
- 腎炎・慢性腎炎に実績のある漢方薬
- 竜胆瀉肝湯(黄連、黄芩、黄柏、山梔子、当帰、川芎、芍薬、地黄、連翹、薄荷、木通、防風、車前子、竜胆、沢瀉、甘草)
- 通導散(当帰、紅花、蘇木、木通、陳皮、厚朴、枳実、大黄、芒硝、甘草)
- 芎帰調血飲第一加減 (当帰、川芎、地黄、益母草、牡丹皮、白朮、茯苓、陳皮、香附子、鳥薬、乾姜、甘草、大棗、芍薬、桃仁、紅花、牛膝、枳殻、木香、延胡索、肉桂)
- 越婢加朮湯(麻黄、石膏、蒼朮、大棗、生姜、甘草)
- 五苓散(桂枝、白朮、茯苓、猪苓、沢瀉)
- 補中益気湯(黄耆、人参、白朮、甘草、生姜、大棗、陳皮、当帰、柴胡、升麻)
- 防風通聖散(防風、麻黄、薄荷、荊芥、連翹、山梔子、黄芩、滑石、大黄、芒硝、石膏、桔梗、甘草、白朮、生姜、当帰、川芎、芍薬)
慢性腎臓病とは
慢性腎臓病では腎臓自体の病気である慢性(糸球体)腎炎、糖尿病や高血圧などの生活習慣病、加齢などが原因で、腎臓の働きが低下したり、たんぱく尿が持続したりします。
慢性(糸球体)腎炎とは
慢性腎臓病の原因の1つである慢性(糸球体)腎炎とは、糸球体の慢性的な炎症によって、たんぱく尿や血尿が出る疾患の総称で、IgA腎症、膜性腎症、紫斑病性腎症などが含まれます。
慢性(糸球体)腎炎がおこる原因
慢性(糸球体)腎炎がおこる原因で最も多いのが、IgA腎症です。
IgAとは細菌やウイルスなどから体を守る免疫物質の一つです。そのIgAが血液中で塊をつくって糸球体内のメサンギウム領域に沈着することで、メサンギウム細胞や周りの基質が増殖し、腎臓に炎症を起こします。それにより腎臓の細い血管が破れ、初期には肉眼では分からないほど微量の血尿が出ます。進行すると、たんぱく尿が出ます。
IgA腎症の原因は、扁桃炎などで口の中に住み着いている細菌などが活発になり、それをきっかけにIgAに異変が起こって、腎症を発症すると考えられています。
次に、糖尿病や高血圧では、細い血管が張り巡らされた腎臓の血管を障害し、慢性腎臓病を起こしやすくし、さらに心臓や脳の血管に動脈硬化を進行させます。
慢性腎臓病はかなり進行するまで自覚症状が現れませんので、検査による早期発見が大切です。腎不全が進行すると透析治療となります。
透析治療の原因の第1位は糖尿病性腎症、第2位は腎硬化症、第3位は慢性(糸球体)腎炎となっています。 糖尿病性腎症では糖尿病の治療が、腎硬化症では高血圧の治療が必要になります。
早期発見には検査を
・尿検査によるたんぱく尿を調べます
血液中のたんぱくは体に必要なので、腎臓の働きが正常であれば、尿として排泄されずに戻されます。たんぱくが尿に漏れ出していれば慢性腎臓病が疑われます。
・尿検査によるたんぱく尿を調べます
血液中のたんぱくは体に必要なので、腎臓の働きが正常であれば、尿として排泄されずに戻されます。たんぱくが尿に漏れ出していれば慢性腎臓病が疑われます。
・血液検査で血液中の尿素窒素濃度(BUN)を調べます
尿素窒素はたんぱく質の老廃物で、腎臓の機能が低下するとBUNが高くなります。
・尿検査による尿潜血を調べます
尿にわずかな血液が含まれることを示す尿潜血では、慢性糸球体腎炎で出やすくなります。
腎臓の働き
腎臓は私たちの体に2個あり、1つがにぎりこぶし程度の大きさです。
① 腎臓に流れ込んだ血液を糸球体でろ過してきれいにし、尿をつくります。
糸球体はわずか0.2mmで、1つの腎臓に100万個あります。老廃物は腎臓の中の糸球体で取り除かれます。糸球体で尿をつくるとき、糖分、塩分、尿酸、カルシウム、マグネシウム、カリウム、リンなど、体に必要なあらゆる成分を調節した健康な血液をつくります。
この働きが低下すると、老廃物が血中から体内にたまり、むくみ、だるさ、食欲不振、吐き気、頭痛が起こります。これを尿毒症といいます。また、余分な塩分は高血圧に、カリウムは不整脈に、リンは呼吸不全、骨軟化症、心不全、くる病などをひき起こします。
② 酸素が足りなくなると腎臓が反応して骨に向けてエリスロポエチンというメッセージ物質を送ります。そして骨で赤血球の増産が始まり、全身に酸素が十分にいきわたります。
この働きが低下すると、貧血、動悸や息切れが起こります。
③ 血圧を監視し、コントロールします。腎臓は血管を収縮して血圧を上げる物質、レニンを、量を調節しながら全身に送ります。
高血圧患者では腎臓がレニンを出し過ぎていることが分かっています。
腎炎・慢性腎炎に実績のある漢方薬
基本処方は竜胆瀉肝湯で、慢性の炎症性疾患に対する処方です。
竜胆瀉肝湯(黄連、黄芩、黄柏、山梔子、当帰、川芎、芍薬、地黄、連翹、薄荷、木通、防風、車前子、竜胆、沢瀉、甘草)
黄連、黄芩、黄柏、山梔子(黄連解毒湯)、連翹、竜胆
糸球体の炎症を抑える、止血作用、扁桃炎の予防
当帰、川芎、芍薬、地黄(四物湯)
腎臓の血流改善、止血作用、補血作用
薄荷、防風、甘草
炎症を抑える、扁桃炎の予防
沢瀉、木通、車前子
炎症を抑える、余分な水分を尿に排出してむくみをとる
IgA腎症ではIgA抗体が血液中で塊をつくって糸球体内のメサンギウム領域に沈着することで、メサンギウム細胞や周りの基質が増殖し、腎臓に炎症を起こします。増殖性の炎症は血流の滞りにより起きるので、血流の滞りを改善する通導散や芎帰調血飲第一加減を使用します。
通導散(当帰、紅花、蘇木、木通、陳皮、厚朴、枳実、大黄、芒硝、甘草)
当帰、紅花
動脈の血管を拡張し血流を良くする活血作用
紅花、蘇木
血流の滞りを良くする
大黄、芒硝、枳実
瀉下作用により血流の滞りを良くする
厚朴、甘草
瀉下剤による腹痛を除く
木通
炎症を抑える、余分な水分を尿に排出しむくみをとる
陳皮
胃腸の働きを良くする
芎帰調血飲第一加減 (当帰、川芎、地黄、益母草、牡丹皮、白朮、茯苓、陳皮、香附子、鳥薬、乾姜、甘草、大棗、芍薬、桃仁、紅花、牛膝、枳殻、木香、延胡索、肉桂)
当帰、川芎、芍薬、地黄(四物湯)
腎臓の血流改善、止血作用、補血作用
益母草、紅花、延胡索
動脈の血管を拡張し血流を良くする
牡丹皮、桃仁、紅花、牛膝
血流の滞りを良くする
牡丹皮
陳旧性の炎症を抑える
鳥薬、香附子、陳皮、枳殻、木香、白朮、茯苓
胃腸の働きを良くする
白朮、茯苓、益母草
余分な水分を尿に排出しむくみをとる
乾姜、肉桂
温めて腎臓の血流を良くする
むくみがある場合は、炎症が大きければ越婢加朮湯を、炎症が小さければ五苓散でむくみを取ります。
越婢加朮湯(麻黄、石膏、蒼朮、大棗、生姜、甘草)
麻黄、石膏
温めて腎臓の血流を良くする
麻黄、蒼朮
利水作用によりむくみを取る
大棗、乾姜、甘草
胃腸の働きを良くする
五苓散(桂枝、白朮、茯苓、猪苓、沢瀉)
桂枝
温めて血行を良くして利尿を助ける
白朮、茯苓、猪苓、沢瀉
利尿作用によりむくみを取る
血尿がある場合は、止血作用のある四物湯を使用します。
疲れやすい場合や貧血がある場合には、補中益気湯を使用します。
補中益気湯(黄耆、人参、白朮、甘草、生姜、大棗、陳皮、当帰、柴胡、升麻)
黄耆、柴胡、升麻
体の筋肉に力を増し元気を補う
人参、白朮、甘草
気を補い元気をつける
白朮、陳皮
胃腸の働きを良くする
黄耆
尿たんぱくを減少させる
高血圧や動脈硬化は腎臓の機能を悪くするので、体内の不要なものを排出する必要があり、防風通聖散を使用します。
防風通聖散(防風、麻黄、薄荷、荊芥、連翹、山梔子、黄芩、滑石、大黄、芒硝、石膏、桔梗、甘草、白朮、生姜、当帰、川芎、芍薬)
防風、麻黄、荊芥、薄荷
体の不要なものを体表から排出する
山梔子、滑石
利尿作用により体の不要なものを排出する
大黄、芒硝、甘草
排便により体の不要なものを排出する
防風、麻黄、荊芥、薄荷
気道粘膜から体の不要なものを排出する
加美漢方薬局
味好俊治